絵文字で見るプラットフォーム別のデザイン哲学:Apple・Google・Samsung・Microsoft・Twitter
同じ絵文字でも、Apple、Google、Samsung、Microsoft、Twitter(現在のX)は、それぞれ違う顔で描きます。会社ごとのスタイルの特徴と、主な変化、このサイトでデザインを比べる方法をまとめました。
絵文字は、Unicodeという国際標準が番号と名前を決め、実際の絵は、各社が描きます。そのため、同じ😀でも、会社ごとに、目の形、口の大きさ、色合いが少しずつ違います。
この違いを、たんなる「絵のうまさの差」と見ると、おもしろくありません。絵文字には、会社ごとに目指す画面のスタイル、ほかの文字との調和、小さなサイズでの読みやすさについての考えが込められています。この記事では、主な会社の絵文字のスタイルと、その変化の過程を、デザインの視点から見ていきます。
会社ごとのスタイルをひと目で
会社ごとに、絵文字を描く方向は、かなりはっきりしています。
- Apple:光沢とグラデーション、細かな陰影が入った、立体的な絵です。小さなサイズでも質感が感じられるように、細部に手をかけているのが特徴で、多くの人が「絵文字の基本の形」として思い浮かべるスタイルでもあります。
- Google:Androidの標準の絵文字である、Noto(ノート)絵文字を作っています。明るい色と単純な形で、親しみやすく、はっきり読める方向を選びました。オープンソースで公開されていて、誰でもダウンロードして使えます。
- Samsung:Galaxy端末の独自の絵文字を使っています。以前は、個性の強いデザインで話題になりましたが、今は、ほかの会社と大きくずれない方向に整えられています。
- Microsoft:WindowsとTeamsの絵文字を作っています。Windows 10のころは、太い黒の縁取りが入った平面的なデザインでしたが、今は、Fluent(フルーエント)絵文字に変わりました。
- Twitter(現在のX):Twemoji(ツイモジ)という、平面的で単純なデザインを作り、オープンソースで公開しました。おかげで、Twitterの外の多くのウェブサービスでも使われています。
大きく見ると、Appleは「写実的で豊かな質感」、GoogleとTwitterは「単純でくっきりした平面」、Microsoftは「太い縁取りの平面から、やわらかな立体感へ」と動いてきた流れだと、まとめられます。
Google:ブロブから丸い顔へ
Googleの絵文字の歴史で、いちばん有名な場面は、「ブロブ(blob)」です。Android 7のころまで、Googleの顔の絵文字は、丸い顔ではなく、やわらかいゼリーや水滴のような形でした。
ブロブは、かわいいと言うファンが多かったのですが、問題もありました。顔の形そのものが、ほかの会社とあまりにも違っていたので、同じ絵文字でも、表情が違って読まれることが多くありました。メッセージをやりとりする相手は、たいてい、ほかの会社の端末を使っているので、絵文字では、個性よりも「同じ意味に読まれること」のほうが大切だという判断が出たのです。
結局、Googleは、2017年のAndroid 8.0 Oreoから、今のような丸い黄色の顔に、デザインを変えました。ブロブはなくなりましたが、今でも惜しむ人がいるほど、象徴的なデザインとして残っています。
Samsung:2018年の大改革
以前のSamsungの絵文字は、ほかの会社と形が大きく違っていて、よく話題になりました。代表的な例が🍪です。ほかの会社が、丸いチョコチップクッキーを描いているときに、以前のSamsungのデザインは、四角いクラッカーのように見えました。顔の絵文字も、表情が独特で、送った人の意図と違って読まれることがありました。
Samsungは、2018年に、新しいユーザーインターフェースであるOne UIを出すときに、絵文字を大きく描き直しました。このころから、Samsungの絵文字は、ほかの会社と意味がずれない方向に近づきました。Googleのブロブの整理と同じように、絵文字のデザインでは、「たがいに似て読まれること」が、結局は重要な基準になったことを示す事例です。
Microsoft:Fluentと3D
Microsoftは、2021年に、Fluent絵文字を公開して、大きな変化を予告しました。公開されたとき、目を引いたのは、やわらかな立体感と照明が入った、3Dのスタイルでした。粘土の人形のようにやわらかく見える顔は、以前のWindowsの絵文字の太い黒の縁取りとは、まったく違う雰囲気でした。
ただし、同じ年に出たWindows 11に、実際に入ったのは、3Dのスタイルではなく、平面に近い2DのFluent絵文字でした。3Dのスタイルは、そのあと、Teamsなどで使われはじめました。そのため、「Fluent絵文字」といっても、どこで見るかによって、平面版と立体版があると知っておけば、混乱しません。
Twitter:オープンソースのTwemoji
Twitterは、Twemojiをオープンソースで公開して、誰でも自分のサービスに入れて使えるようにしました。端末に関係なく、同じ形で見せられるという利点から、多くのウェブサイトやアプリが、Twemojiを採用しました。
TwitterがXに変わる過程で、もとのリポジトリの更新が止まり、今は、開発者コミュニティが作った派生(フォーク)のプロジェクトであるjdecked/twemojiが、新しい絵文字を加えながら、管理を続けています。
デザイナーたちが共通して悩むこと
会社ごとにスタイルは違っても、絵文字を描くデザイナーがぶつかる問題は、似ています。
とても小さなサイズでも読めなければならない
絵文字は、ほとんどが、文字のサイズ、つまり爪より小さなサイズで見られます。大きな画面ではすてきな質感や陰影も、小さく縮めると、つぶれてしまうことがあります。そのため、目や口のように、感情を伝える部分は、大きくはっきりと、残りは単純に描くのが基本です。Twemojiのような平面的なデザインが、小さなサイズでくっきり見える理由も、ここにあります。
名前はひとつ、解釈はいくつも
Unicodeが決めた名前が同じでも、どの瞬間を描くかは、デザイナーが決めます。🤗(ハグをしている顔)は、会社によって、両腕を広げて抱きしめようとする姿にも、手を振って「じゃーん!」とする姿にも見えます。😬(歯をむき出した顔)は、デザインによって、ぎこちない笑いにも、困って歯を食いしばる表情にも読めます。こうした絵文字は、会社どうしの違いが、とくに大きく感じられます。
ほかの会社とあまりに違っても困る
メッセージは、ほかの会社の端末にも届くので、一社だけが独特な解釈を選ぶと、誤解が生まれます。先に見たGoogleのブロブや、以前のSamsungのデザインが整理された理由も、Appleが🔫を水鉄砲に変えたあとで、ほかの会社が順に追いかけた理由も、結局は、「たがいに同じ意味で読まれなければならない」ということにあります。
このサイトで3つのデザインを比べる
emojicanvasの絵文字の詳細ページには、「デザイン別の画像」の欄があり、ここで、3つのデザインを並べて見られます。
- Google Noto:Androidの標準の絵文字と同じ系統
- Twemoji:Twitterではじまった平面的なデザイン
- Microsoft Fluent:Windows 11の絵文字と同じ系統
AppleとSamsungのデザインは、ライセンスの問題で、このサイトでは画像としてお見せしていません。その代わり、いちばん上に大きく見える絵文字は、いまお使いの端末が直接描いた形なので、iPhoneやGalaxyを使っているなら、その端末のデザインと、3つの画像をいっしょに比べられます(Emoji 16.0以降の最新の絵文字は、いちばん上もNotoの画像で表示されます)。
比べるときは、表情が微妙な絵文字を選ぶと、違いがよくわかります。
- 😬ぎこちなさがどれだけ強く見えるかを比べる
- 🤗ハグか「じゃーん」か、手の形を比べる
- 🥴ふらふらした表情の誇張の度合いを比べる
まとめ:個性と統一のあいだ
絵文字のデザインの歴史は、会社ごとの個性と、たがいに同じ意味に読まれなければならないという要求の間で、バランスを探してきた過程です。Googleのブロブや、以前のSamsungのデザインが整理されたのも、結局、絵文字が、ほかの端末とやりとりする「文字」だからです。
それでも、会社ごとの固有の色合いや質感は、今も残っています。気になる絵文字があれば、詳細ページで、3つのデザインを比べてみてください。同じ😀の中にも、各社のデザイン哲学が、少しずつにじんでいます。
最終確認 2026-10-23